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コラム

 

日ハム新球場ファウルゾーン問題について

2023年02月06日
弁護士  川島 英雄   プロフィール

 法律を専門とする弁護士がこのような意見を述べることに対し、批判的な見解を持つ人もいるかもしれませんが、スポーツ好きの一弁護士の意見として述べさせていただきます。

 

本年3月、ついに北海道日本ハムファイターズの新球場「エスコンフィールド北海道」が開業します。私を含め、北海道の野球ファンはとても楽しみにしていると思います。

 

そのような中、昨年、新球場のファウルゾーンが、公認野球規則を満たしていないことが発覚しました。これに対し、日本ハムが、今季終了後に改修するという提案をしたところ、これを条件に今季の特例使用が認められたと報道されました。

 

私の疑問は、「なぜ改修しなければならないのか?」ということです。

 

今回の問題は、公認野球規則2.01に書かれている「本塁からバックストップまでの距離・・・は、60フィート(18.288メートル)以上を必要とする」に反しているということです。

確かに、「必要とする」と書かれている以上、実際に新球場のファウルゾーンのこの部分の距離が60フィートに満たないのであれば、規則違反ではあるでしょう。よって、規則違反に対し、何かしらの対応は必要だと思います。

 

しかし、その対応が、なぜ球場の改修でなければならないのでしょうか。

 

既に数多くの方が指摘していることですが、公認野球規則2.01の基になったといわれるアメリカの野球規則では、「義務」ではなく「推奨する」というだけの規定になっていて、アメリカでは実際に60フィートに満たない球場が存在しているそうです。

ということは、少なくとも今のアメリカでは、「60フィート以上の距離を確保しなければ野球という競技が成り立たない」とは考えられていないということになります。

 

また、これも既に多くの方が指摘していますが、日本の公認野球規則2.01に書かれている「必要とする」という表現は、アメリカの野球規則の誤訳ではないかと言われています。

そうだとすると、現在の日本の公認野球規則2.01に書かれている「60フィート(18.288メートル)以上」には、なぜそのような距離が必要だといえるのかという合理的な理由が欠けているのではないでしょうか。

 

法律の世界では、確かに条文の文言解釈も重要です。

ですが、他方で、法律の条文を解釈する際には、その法律がつくられた目的や狙いという意味の「法律の趣旨」というものを重要視します。

法律の趣旨に沿うような解釈が求められたり、一見文言に合致していないように見えても、法律の趣旨を踏まえて裁判所が柔軟な解釈を行い、判決を下すといったこともあります。

さらに、制定された当時の法律の趣旨自体が現在に当てはまらない場合には、裁判所がその法律を憲法違反と判断することもあります。憲法違反と判断された法律は、そう遠くないうちに国会で廃止されたり、改正されたりします。

よって、法律の世界でも、常に「規則は規則だから絶対に守らなければならない」とされるわけではないのです。

 

もし、球場の改修が必要なのだというのであれば、「規則に反しているから」というだけの理由ではなく、野球という競技のためには60フィート以上の距離が必要であり、今後もこの距離が守られなければならないという合理的な理由が必要ではないかと思います。

この理由が説明できないのであれば、改修が必要なのではなく、元の規則に合理性がないということですから、規則を変えるべきだと思います。

 

なお、このような意見に対し、規則違反を無罪放免にするのはおかしいとか、規則の方を変えるのは近代国家ではないなどという批判があるようです。

しかし、私は決して無罪放免にしてよいとは考えていません。日本ハムが規則違反をしたということに対しては、何かしらの対応は必要だと思います。例えば、同じ費用を費やすのであれば、改修させるのではなく、改修に要する費用程度の罰金的なお金を収めさせるといった形も考えられると思います。

また、既に述べたとおり、規則自体に合理性がない場合に規則を変えることは、むしろ近代国家の正しい在り方だと思います。

 

一人のスポーツ好きの弁護士として、今回の問題が、野球やその他すべてのスポーツの発展にとってよりよい解決に至ることを心から願っています。

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